白菜が収穫されるようになった。
数週間前から、少しづつ採られていたようなのが、冷え込むようになってきて収穫量が増えたように思う。
紅葉が色づくということは、冷え込んできていることでもあり、冷え込んでくると、白菜も甘くなる。
赤い紅葉と白い白菜の関係は、美しい。
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白菜の白いところをまじまじと見つめていると、無性に鍋料理が食べたくなる。
そして、白菜の先端。柔らかく、くしゃくしゃに縮れた葉っぱのところを見ていると、思い出す人がいる。
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友人のところには、いろいろな人がやってくる。
その中には、料理人という人が、案外多い。
春先のこと。友人が大怪我をして入院したことがあった。その長い入院期間、自分の仕事を放り出してまで手伝いにきていた料理人がいた。
その人は、石井さん。
友人の奥さんは、「料理人の方が、手伝いにきてくれるんやて・・・」と、言っていた。
僕は、「どんな人がやって来るんだろう」と、想像をかき立てていた。
そこへ、彼は、やってきた。
黒いセーターに茶色のパンツ。浅黒い肌に口ひげを蓄え、クリッとしたつぶらな瞳。話すとやたらとハスキーな声を出す、どこか愛らしいおっさん。それが、石井さんだった。
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そもそも、僕は、料理人という人、料理人という仕事をよく知らない。
スーパーで見かける野菜と少し違う形をした野菜を見たら、「へんな野菜!」と言い切ってしまう今時のこどもたちのように、料理人は、テレビの中で作られていた。料理店で見かける料理人の服装をした人こそ料理人だ、と思っていた。
僕は、このブログに、自分の料理についても書くつもりだ。でも、本物の料理人を前にすると、少し小さな口になる。なにしろ、料理人という仕事がわかっていない、というのが厄介だ。でも、この口が滑ると、よけいなことを言ってしまうかもしれない。うーむ。まあ、陰口を言うことはないが、本人を目の前にすると、言ってしまうかもしれない。わからん。
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この石井さん。京都でも老舗の料亭で仕事を覚え、その後、大使館の料理人となって世界を渡り歩いてきた。
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・・・・。
おいおい。
全然わからんじゃないか?僕のやってきた料理と何が違うんじゃあ!
老舗の料理なんて、滅多に食べられないし。そもそも、ブログで書いているのに、なんて説明すればよいのじゃあ!
適当な料理雑誌だったら、上の説明で十分なんだろうけど、このブログでは、そんな横暴は許さん。
ん。ちょっと違う方向に進み始めているかも・・・。(反省)
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石井さんが料亭で働き始めた頃、店のお使いで、友人の畑にやってくるようになった。店のお休み、店の開ける前、店が終わった後、友人のところにやってきて、農作業を手伝った。だから、友人との付き合いは僕よりもずいぶんと長い。
しかし、熱心なところは、手伝いだけという訳でもなさそうだ。
彼と畑に一緒にいると、そこら中に生えているものに手を出す。野菜とわかっているものなら、そのまま口に入れる。
お腹がすいているのだろうか?
たしかに、彼は大食いだった。ほんとうにどんぶりでご飯を食べる。しかも、オカワリをする。
彼は、畑に育っている野菜や花を口に入れながら、味を確かめていた。
しかし、その様子を見ていると、畑の中で、蝶や虫を追いかけながら走り回っている・・・と言っても、不思議がないほど、目に付くものに近づいていき、ポキリと手折って、口に運んでパクリと食べている。
ポキリ。パクリ。まさに、好奇心の固まりだ。
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実際、料理人という方と話をしていると、「そんなことをするんだあ」という声を上げる機会が多くなる。
そして、料理人というのは、なかなか得体の知れない存在だな、と思う。
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包丁を一本持って、それをさらしに巻いて歩き回っていたら、今時の料理人は、テロリストとして間違われてしまうかもしれないが、ポキリ・パクリは、料理人なんだろうか?いや、料理人なんだ、と思った。あるいは、ゲリラかもしれない。
僕は、料理人は、僕のように雑学から学んだ料理とは違う、正しい料理をする人、と思っていた。何が正しいかは別として、そのあたりの正統派であることも間違ってはいない、と思う。でも、石井さんのように、ちゃんと学んできていることだけでは飽き足らずに、ポキリ・パクリとやる人もいる。
その姿を知った上では、僕は、なによりも、この人の人柄を大切にしたいと思う。
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春先、白菜の畑でのこと。
石井さんは、白菜の花をポキリとやって、僕に手渡した。
白菜の花は、大根の花とよく似ている。
でも、少しだけだが、白菜の葉っぱの先のように波うった感じがある。
パクリ。んが。
この味は忘れられない。恐るべし、料理人。
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