僕は、辛いカレーが好きだ。
だから、カレーを辛くしたい時には、できるだけたくさんのトマトを使うにしている。このことは、少し矛盾しているように思う方がいるかもしれないが、僕の考えでは正しい。
トマトの酸味は、熱を加えていくと濃厚なうまみと甘さに変わる。
中華料理でも、辛いものになればなるほど酸味を加えたりするようなので、辛みと酸味の間には、なんらかの因果関係があるに違いない。
カレーを作る時、何種類かのトマトを混ぜ合わせると、よりおいしくなる。
昔、テレビ番組でイタリア料理のシェフが、トマトを2種類以上組み合わせて使うことを勧めていたが、その意図は、僕の考えとたぶん同じような理由ではないだろうか?
僕の場合、誰かに料理そのものを習ったわけではないから、この辺りの考えは、すべて偶然の賜物だった。
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友人の近所に移り住むようになるまでは、トマトを大量に使う時は、ほとんど缶詰だった。そして、この缶詰は、安売りのときに買い溜めるので、特に銘柄に対してこだわらずに買っていた。ストック用の棚には、いつも何種類かのトマトの缶詰があった。しかし、一度にたくさんのトマトを使おうとなると、どうしても異なる銘柄が混ざり合った。その結果、味にバラツキが出ているように思えた。でも、その時には、なにが原因なのかはわからずに、ただ料理の出来具合を楽しんでいた。
ある日のこと、スーパーで買い物をしていた時にドライトマトが目に留まった。どうやって使うのか?よくわからずに、ドライトマトの入っている袋に裏書きされたメモを見ると、生のトマトよりも甘みがあります・・・とあった。
面白そうなので、使ってみることにした。
魚の干物でもそうだが、天日に干せば、うまみが増す。当然のことながら、ドライトマトにもこの理屈が当てはまると思った。実際に使ってみると、ドライトマトだけを使ったために、すこしドライトマトの味が出しゃばっていた。そこで、ほかの具材を足して味を整えようとしたのだが、今度は、トマトの味が薄くなってきているように思えた。ここで、トマトの缶詰が登場し、間髪入れずに鍋に放り込まれることになった。
こうして、右往左往した結果、試食してみると、いつもよりも味がしっかりとしていることに気がついた。当然のことと言えば、それまでである。ドライトマトという新しい食材が加わったからだ。しかし、最初から組み合わせていたら考えもしなかったことかもしれないが、僕にとっては、これは、一つの発見だった。トマトの缶詰だけでなく、ドライトマトだけでもない。組み合わせたトマトがおいしいのだ。
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この発見は、僕にいろいろなことを教えてくれることになった。
その結果、僕がカレーと作る時には、複数の種類のトマトは欠かすことのできないものとなった。
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先日、あるテレビ番組を見ていると、こんなコメントがあった。
「人間は、体の中に取り入れた食物を分子レベルの小さな単位にしてから味わう・・・」
たしかに、舌で味を感じるのは、舌の表面にある『味蕾(みらい)』という細胞の仕事だ。味蕾のところに、複数のトマトが刺激が与えわれれば、細胞からの刺激が脳に伝わった時、脳は、過去の記憶と照らし合わせながら、一つに定まろうとしない味の変化にバタバタしているのだろう。味の深みとは、こうして生まれるように思われる。
さまざまな野菜を使ったソースがおいしいのも、それと同じ理由ではないだろうか?
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分子レベルでの融合。
このことは、トマトの水耕栽培の話を聞いたときにも、妙に納得したことだ。
一定の比率で作られる溶液は、トマトの生育に必要なものを混ぜ合わせて作られる。机上の理屈からすれば、トマトの生育に最適なものを準備した上で、栽培するのだから、おいしいものができて当然のように思われる。ところが、友人は、「トマトを水耕栽培すると、味が単調になる」と言った。
この友人の発言を僕は強く支持する。
この畑で作られたトマトは、どれも味が均一になってしまう可能性があり、その結果、このようなトマトだけを使っても、味は、均一であっても、深みがなくなってしまうのではないだろうか?
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うーん。なんとなく力説してきたなあ。
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さて、ようやくカレーの話に戻る。
友人から貰ったたくさんのトマト。ここに別のトマトを足して使うのか?
実は、最近、それをしていない。
友人のトマトを食べるようになって、深い味のするトマトが、それだけで何種類ものトマトにも勝るとも劣らない味わいであることを僕は学んだから、別の種類のトマトを足すなんて、恐ろしいとさえ思う。
いつか試してみたいという誘惑はある。
禁断の世界に足を踏み入れれば、戻って来れなくなるかもしれない。
でも、このトマトが食べれる間は、このトマトそのものが持つ味の深みを堪能していたいのも、正直な気持ちだ。
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さて、そろそろカレーの具合を確かめないと、ずいぶんと煮込んでいる。
良い味が出てきている頃だと思う。
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